連結決算を効率化!子会社経理の管理事例3選(後編)
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前編では、親会社による子会社経理の管理方法を、以下の3つのパターンに分けて、それぞれの基本的な特徴と、連結・開示業務への全体的な影響について解説しました。
- 親会社主導型
- 子会社裁量型
- 親会社完全管理型
後編となる本稿では、これらの管理方法の違いが、皆様の日々の経理業務、特に「決算情報の収集」と「会社法決算」に具体的にどのような影響を与えるのかを、より深く掘り下げて解説していきます。

子会社管理が「決算情報収集」に与える影響
連結決算に必要な子会社の財務データを親会社が集める際の効率や方法論は、管理タイプによって異なります。
親会社主導型
グループ全体で会計システムやその周辺システムが統一されていることが多いため、親会社がシステムから直接子会社の決算データを取得でき、情報収集の効率が非常に高いのが特徴です。
システムから自動で得られる情報が多いため、収集パッケージの利用は、システムでカバーできない詳細なデータや注記情報に絞られます。ただし、海外子会社など、システム統一が難しい場合には、時差や言語を考慮した専用の収集パッケージを用意するケースも見られます。
子会社裁量型
子会社ごとに会計システムや運用が異なるため、親会社が子会社の決算情報を集める主な手段は、収集パッケージ(Excelなど)のみとなります。
パッケージに全ての情報を盛り込もうとすると、項目数が過度に多くなりがちです。項目が増えすぎると、法改正や連結方針の変更のたびに発生するパッケージのメンテナンス作業が、親会社にとって大きな負担となります。特に経理のリソースが限られた中堅企業では、この作業が重荷になるケースが少なくありません。必要な情報を過不足なく効率的に収集できるよう、収集パッケージの設計が非常に重要になります。
親会社完全管理型
親会社の経理部門が子会社の経理業務を代行しているため、そもそも子会社から決算情報を「収集する」というプロセスがありません。子会社の決算データは親会社と同じサーバーなどで一元管理されており、親会社の担当者がいつでもアクセス可能です。
これにより、情報の整合性や正確性を保ちやすくなります。また、決算スケジュールや業務の優先順位付けも親会社主導で行えるため、グループ全体の決算業務を効率的に進めることが可能です。
子会社管理が「会社法決算」に与える影響
国内子会社の「会社法決算」(事業報告や計算書類の作成)は、親会社の関与度合いによって、子会社の作業負担や作成する書類の品質に違いが生じます。
親会社主導型
親会社が会社法決算に積極的に関与し、グループ全体で書類の品質を統一します。
親会社が決算スケジュールを決定し、事業報告・計算書類のひな形を全て準備します。株主総会の議事録や進行表のテンプレートまで親会社が用意し、年次決算から株主総会までの一連の流れを包括的に管理します。
子会社が作成した書類を親会社が全てチェックし、保存管理するため、法的要件の遵守と書類の品質向上が実現します。その反面、親会社の経理部門には、相応の人的リソースが必要になります。
子会社裁量型
親会社が会社法決算に関与する割合は低く、子会社の自主性が重んじられます。
会社法決算のスケジュール決定は子会社側が親会社と調整して行います。事業報告・計算書類のひな形は提供されないため、各子会社が独自のExcelやWordで作成しているのが一般的です。
親会社は必要に応じてこれらの書類を入手するのみで、書類の品質や法的な遵守については各子会社の責任となります。このため、子会社側には、経理・法務に関する一定レベルの知識と体制が求められることになります。
親会社完全管理型
会社法決算のスケジュール決定や書類作成は、親会社の経理担当者が行います。
親会社の経理人員が限られている場合、親会社の書類作成が優先され、子会社の書類作成が後回しになることもあります。また、子会社数が少ないこともあり、作成はExcelやWordで行われることが多く、システム化による効率化の恩恵を受けにくい傾向があります。この管理方法では、親会社の経理担当者様の業務負荷の管理と、無理のない適切なスケジュール調整が品質維持の鍵となります。
まとめ:最適な子会社管理は継続的な見直しから
今回は、親会社が行う子会社経理の管理方法の違いが、具体的な「決算情報収集」と「会社法決算」の業務にどのような影響をもたらすかを見てきました。
どの管理方法にもメリットとデメリットがあり、企業の規模、業種、経営方針、そして組織風土によって最適な形は異なります。重要なのは、一度決めた管理方法に固執するのではなく、事業環境の変化や子会社の成長に合わせて、継続的に見直し、柔軟に対応していくことです。
特に、グループ全体の決算業務を効率化し、高品質な開示を実現するためには、子会社からの情報収集の仕組み化、および書類作成の標準化が欠かせません。
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